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「悪左府」あらすじ

時は平安時代末期。源平の争いが始まった頃。

後の左大臣・藤原頼長(よりなが)は、実は女・長子(ながこ)であり、藤原家の長者(統領)である藤原忠実(ただざね)の長女。長子は非常によく似た弟・菖蒲若(あやわか)と共に男女の双子で生まれた。忠実は長子の兄である長男の忠通(ただみち)が実の子かどうか疑っていた。というのも、忠実が藤原家の長者と成って以来、毎月のように夢に出てくる謎の上人に「上の子はお前の子ではなく、摂政関白に就かせたりすると藤原家を滅ぼす」と語りかけられているからである。そうでなくても、忠通の狡猾さを忠実は疎んでいた。しかし、この狡猾さは幼少にして美貌と聡明さを垣間見せる長子への妬みから来たものであった。

双子が生まれた五年後のある日、忠実の夢にまた上人が現れ、吉野山の蝦蟇祠(がまのほこら)へ一人で来いと語りかけてきた。そこに現れたのは人語を話す大蝦蟇であり、忠実に「長子こそ藤の家の次の長者、菖蒲若は馬にも乗れぬような身体になる」と言い放った。祠に落ちた雷で忠実が気を失うと、将門の娘である滝夜叉(たきやしゃ)の怨霊が現れ、蝦蟇を忠実の馬に憑りつかせ、父を殺した藤原秀郷(ひでさと)に連なる藤の家を内側から崩れ落ちるように仕向けることを念じた。

その頃、忠実の命に背いた菖蒲若と長子は遠乗りに出て落馬し、菖蒲若は足に大怪我を負って二度と走ったり馬に乗ることができなくなり、長子は頭を打って記憶を失った。忠実は菖蒲若を家人の養子に出し、長子を男子として育てて将来の長者にすることと決めた。

長子は学問・政治に非常に秀でた男装の麗人として、次々と出世して左大臣となったが、容赦のない苛烈な性格から「悪佐府」と呼ばれ、敵が多かった。しかも、政治的に同等の右大臣となった兄・忠通とは音信が途絶えるほどの不仲であり、落馬で五歳までの記憶を失ったため、弟・菖蒲若のことは知らぬままだった。長子は昼は男として政務にあたり、夜は女として、唯一の愛人である武士・源義賢(よしかた)と秘密裏に愛し合っていた。ある夜、長子は館の居室に義賢を呼び平家打倒の密談を始めたが、これを庭先の木の陰から田楽姿で覆面の男が見ているのに気付いた。男は足が悪く、杖をついているが、追手を杖で上手にまき散らして逃げた。長子はこの男の目に魅入られてしまった。

翌朝、この男が藤原家成(いえなり)の館に入ったと知った長子は、尼に変装して館へ向かい、館の裏におびき出させた田楽男を尋問する。するとこの男は長子の幼名である菖蒲若を名乗り、生き別れの弟だと言い出した。当時の記憶のない長子が訝しんでいるところに大蝦蟇が現れ、長子はこれを退治しようとして誤って菖蒲若を刺殺してしまう。これを知った義賢は館を打ち壊して証拠を隠したが、長子に横恋慕していた家成の恨みを重ねて買うことになってしまった。

ひと月後、帝が崩御すると、兄の忠通が新帝に取り入って実権を握り、しかも、長子が謀反を企てたとのデマが流されたため、役職を奪われてしまった。また、家成と組んだ平家の武士に館を急襲され、長子と義賢は都を脱出して、数少ない郎党と忠実の館へ落ち延びた。しかし、館の門は開かず、長子の胸に忠実の矢が突き刺さった。苦しみつつ理由を問う長子に忠実は、長子が殺したのは菖蒲若であり許せぬと答えた。その経緯を長子が問うと、大蝦蟇が現れ、藤の家を内側から崩すには長子の母の霊魂の守りが厚く、これを破れる肉親者である父・忠実に憑りつき、長子が忠実には許されぬ大罪を犯すように仕向けたという。長子が亡き母から秘密裏に預かっていた源氏の白旗を大蝦蟇に向けると、術が破れ滝夜叉の怨霊が現れた。虫の息の長子は、白旗を義賢に渡して、怨霊退散と源氏再興を託し、正気を取り戻した忠実の腕の中で息絶えた。義賢は白旗の霊力で怨霊と戦い退けたが、その恨みを受け、子息に未来を託すべく落ち延びるのであった。

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